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最高裁判所第二小法廷 平成6年(行ツ)193号 判決

東京都新宿区百人町三丁目一番五-一七〇二号

上告人

佐藤正雄

東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号

被上告人

新宿税務署長 柴田勝夫

右指定代理人

泉本良二

右当事者間の東京高等裁判所平成五年(行コ)第一六三号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が平成六年六月二三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について

所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、所得税法施行令一一八条の規定する計算方法に従って被上告人がした上告人の昭和六〇年から同六三年までの所得の計算に違法がないとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はない。論旨は、違憲の主張を含め、独自の見解に立って原判決の法令違背をいうものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 福田博 裁判官 大西勝也 裁判官 根岸重治 裁判官 河合伸一)

(平成六年(行ツ)第一九三号 上告人 佐藤正雄)

上告人の上告理由

一 現物売買値幅取り計算法

1 被上告人の聡平均法

(1) 被上告人の現物売買値幅取り計算法

所得税法施行令一一八条(以下聡平均法という)は、売却代金と聡平均株価との差としている。したがって、聡平均株価の計算が出来ないと聡平均法損益計算はできない。

株式は株式会社創立時から流通しているから、明治・大正時代から流通している銘柄も多い。敗戦後の証券取引所再開の昭和二四年から数えても四五年過ぎていて、上告人が株式初投資をした昭和三七年から数えても三二年過ぎている。

顧客勘定元帳の保存義務は商法で一〇年間である。本訴事件においても、顧客勘定元帳も昭和四八年七月以前のものは処分されてない。したがって、株式市場から取得(受株と買付)代金と、その間の増資による増加株の計算が増資時の所有株数がわからないから、聡平均(移動平均または算術平均)株価の計算は数学的に不可能である。そのため売却代金と聡平均株価の差とする聡平均法の損益計算は出来ない。

(2) 聡平均法は顧客勘定元帳の前年度からの繰越金と次年度への繰越金および、現金入金と現金出金を考慮しない不思議な計算方法

現物値幅取りは現物株を所有していないと売却はできないから値幅取りはできない。最初から所有株がないと証券市場から時価で買付けることとなる。上告人は昭和三七年後半所有株を売却し現金化した五〇万円弱と郵便貯金の合計約二〇〇万円で配当利回りのよい東京電力、旧三菱重工の解体した三菱造船・日本重工・旧三菱重工(以上現在の三菱重工)、東洋レーヨン、日本石油、石川島播磨、東京ガスなどを買付けた。信用取引は乙第一五号証・別添え 1の1 のように昭和三九年五月以後始めた。値幅取りは値幅変動の大きい銘柄でなければ利益は得られない。値幅取りを自動化するためには現物株売りの信用買い建ての値幅取りである。これは昭和四一年末から四二年初めの東京建物、これに昭和四六年後半から昭和四七年三月頃までの清水建設、大林組が加った。(本上告理由書付表-2・以下付表という)。繰越金減少はその金額分だけ信用買建株を受株する事が出来、現金持込超過金も同じである。繰越金増加および現金持出超過は何れかの銘柄の現物株を売却することになる。したがって、繰越金(現金残)増減と現金出入金を考えない聡平均法は空想的・仮想的計算方法である。

2 上告人の時価法

顧客勘定元帳は、前年度の繰越金から発生年月日順に借り方の欄の受株と買い付代金の取得代金、信用損金、現金出金(名義書換料を含む・以後も同じ)を差引き、貸し方の欄の売却代金と渡し株式金、信用益金、信用配当金、現金入金を加え、次年度への繰越金となっていく。すなはち顧客勘定元帳はおかね(金銭)の流れとして記帳されている。そして、残金がマイナスになることは決してない。これを数学的に解いたのが甲六号証の株式売買の値幅取りと損益計算法の4・6「株式売買における資産増減の合理的計算法である。数学的であるから∑を用いている。はT1からT2の期間を集めるということで、年間であるとT1が大発会でT2が大納会である。は銘柄からまで、銘柄別に全銘柄について集める事を意味する。この計算方法を 時価法 と名付けたのは、株価が取得価格に関係なく市場価格の時価で売買されるからである。

顧客勘定元帳からの借り方の欄の減算と貸し方の欄の加算が前年度からの繰越金と次年度への繰越金の差となるという式11(甲第六号証六三ぺーじ)を適当に左辺を右辺に移行し、現物売買値幅取り計算を年平均株価にすると、左辺は値幅取り等で現物売買値幅取りと信用損益金と信用配当金に、右辺は株式増減等の株式増減を金額で評価した額と出入金超過(持ち出し超過はプラスで持ち込み超過はマイナス)と繰越金増減(増加はプラスで減少はマイナス)の株式増減等になる。

右辺の株式増減等を見れば、現物売買と信用取引の値幅取りと信用配当金が現金として持ち出されているか、所有株増減となっているかが一目瞭然である。値幅取りと信用配当金が所有株増となっていれば、未処分利益で課税対象とはならない。

二 総平均株価計算不可能は、顧客勘定元帳の初頭に売却先行の形で現れ、現物売買値幅取りは売却と取得株数、および、売却代金と取得代金で計算できる(時価法)

1 総平均株価計算不可能は、顧客勘定元帳の初頭に売却先行の形で現れる

上告人の値幅取りは現物売りの信用買い建ての値幅取りである。したがって、信用買い建て株の受け株とその売却の間で現物売買値幅取りが形成される(僅かに株式市場から直接買い付けた株もある。以下同じ)

(1) 昭和四八年七月~九月の顧客勘定元帳(甲第二六号証・付表3-A)

(イ) 清水建設

甲第二六号証の第1ページに四、〇〇〇株、第2ページに四、〇〇〇株、第3ページに一、〇〇〇株の売却が行われている。したがって、昭和四八年六月末には少なくとも九、〇〇〇株以上所有いていた。

(ロ) 大林組

甲第二六号証第3ページに二、〇〇〇株の売却が行われている。したがって、昭和四八年六月末には二、〇〇〇株以上所有していた。実際にはその後の受け株と売却株数から二一、六七八株である(付表-1)。

(ハ) 東京建物

甲第二六号証からは受け株先行となっているが、昭和四八年七月-六一年五月一二日までの受け株集計は三九八、四一九株で、売却株集計は四〇八、一五〇株である。売却超過株は九、七三一株であるから昭和四八年六月末の所有株は少なくともこれ以上である。実際には昭和五八年末の所有株数から逆算した株数は三二、八一四株(実際には約三五、〇〇〇株)である。

(ニ) 三菱重工

売却先行とはなっていないが、その後の受け株株数と売却株数の差から四、〇〇〇株の売却超過株となっていて、昭和四八年六月末には四、〇〇〇株所有していた。

(2) 昭和四八年一〇月からの顧客勘定元帳(乙第一一号証・付表-3-B)

(イ) 東京建物

乙第一一号証 第1ページに四、〇〇〇株売却されている。もし第二六号証がないと昭和四八年九月末には少なくとも四、〇〇〇株以上所有していたことになる。

(ロ) 大林組

乙第一一号証第1ページに八、〇〇〇株売却されている。もし甲第二六号証がないと、昭和四八年九月末には少なくとも八、〇〇〇株以上所有していたことになる(売却先行)。

(3) 東京建物、清水建設、大林組、三菱重工の総平均株価は計算不可能

東京建物は昭和四一年末に信用買建てされたから四二年前半に受株され、それ以後、その受株と売却株との間に現物売買値幅取りが行われて来た。清水建設と大林組はニクソンショック後の昭和四六年後半に東京建物の他に値幅取り銘柄として信用買建てされたものであるから、昭和四七年には受株されている。三菱重工は昭和三九年合併前の三菱造船、日本重工、旧三菱重工を最初の株式投資の昭和三七年後半に株式市場から買い付けた。東京建物、清水建設、大林組、三菱重工の増資は 付表-2 のようであった。顧客勘定元帳がないから売却株数も受株株数もその代金もわからない。それ故、増資割当時の所有株数もわからないから、増資による所有株数増もわからない。市場から時価で信用買建て株価もわからないから受株代金もわからない。総平均株価計算は受株時と増資所有株増のときそれぞれ計算し直す。総平均株価計算は数学的に不可能である。

総平均株価の計算が出来ないと、現物売買損益計算が売却代金と総平均株価の差とする総平均法の計算は出来ない。

2 時価法

現物売買値幅取りは売却株数と取得株数、および、売却代金と取得代金から計算できる

(1) 昭和四八年の値幅取り銘柄と株価(付表-5-A)

値幅取りは現物売買でも信用取引でも株価変動巾が大きい銘柄でなければ利益につながらない。株価は昭和四六・四七年のいわゆる列島改造論で値上がりし、昭和四八年一月にピークつけ、バブルの崩壊とともに値下がりに転じた。このような時の現物売りの信用買建ての値幅取りはピーク時の信用買建株が多数あるので株価が値上がりに転ずるまで待つしかない。電力株などは値幅変動が小さいから到底値幅取りなどできない。値幅取りが行われたのは東京建物、清水建設、大林組の3銘柄だけであった。

東京建物は割当日六月三〇日無償〇、一の増資、清水建設は割当日一月三一日の有償〇、四と無償〇、一の抱き合わせ増資、大林組は割当日一月二五日の有償〇、四と無償〇、〇四の抱き合わせ増資、および、割当日九月二五日の無償〇、〇五の2回の増資があった。

東京建物の株価は増資前は高値三七八(一・五)で安値二八一(四・二五)で、〇、一の無償増資後の高値二八九(七、一二)で安値二一五(一一・、二四)である。〇、一の無償増資を考えても株価は一月高値の年末にかけて値下がりした。

清水建設と大林組も増資を考慮しても東京建物と同じく一月一五日高値の一二月一四日安値であった。

(2) 昭和四八年七月-一二月の取引(付表-5)

値幅取り銘柄が東京建物、清水建設、大林組の3銘柄だけであったので損益計算は非常に単純である。

(イ) 信用損金(単位円・上告人と被上告人の間に争いはない。付表-5-B)

信用損金は付表-5-Bに示されており、東京建物は八、〇〇〇株でマイナス六三二、七七五、清水建設は六、〇〇〇株でマイナス三二三、四七八、大林組は八、〇〇株でマイナス三一四、八七八で、3銘柄の総計はマイナス一、二七一、一二九である。上告人、被上告人ともに顧客勘定元帳から集計しているので両者の間に争いはない。

(ロ) 信用配当金(単位円・付表-5-C)

東京建物の決算期は一二月末で、中間配当が有るから三月と九月、清水建設と大林組は決算期は三月末で、中間配当があるから六月と一二月に信用配当金が顧客勘定元帳に記入される。上告人、被上告人とも顧客勘定元帳からの集計であるから争いはない。

所有株数は、東京建物は三月末と九月末に送付されてくる配当金から、清水建設と大林組は六月末と一二月末に送付されてくる配当金からわかる。

(ハ) 現金入出金(単位円・付表-5-D)

現金入金は七、〇七二、〇〇〇、現金出金は一、〇四〇、〇〇〇であるから持ち込み超過金は六、〇三二、〇〇〇である。総平均法ではこれが考慮されない。

(ニ) 現金残(繰越金)の増減(単位円・付表-5-E)

顧客勘定元帳(甲第二六号証)の六月三〇日の現金残(繰越金・預り金と信用保証金の合計)は八、一五五、四九九で次年度への繰越金は一、五八八、五八四である。したがって、現金残は六、五六四、九一五の減少である。総平均法ではこれが考慮されない。

(3) 現物売買値幅取りは売却数と取得(受株)株数、および、売却代金と取得代金から計算できる。

付表-6は現物売買値幅取りが行われた東京建物、清水建設、大林組の3銘柄の受株(取得)株数と受株代金、売却株数と売却代金を、甲第二六号証と乙第一一号証の一二月末までのものを顧客勘定元帳のページ順に、転記したものである。

東京建物は七月から一二月までに取得株数二一、五〇〇株(この中には七月二日の〇、一無償増資による信用買建二五、〇〇〇株の引き受け権利行使の二、五〇〇株を含む)で、取得代金六、八七六、二七六で、売却株数は一八、〇〇〇株で売却代金は四、七五七、一四七である。

清水建設は受け株株数は三四、〇〇〇株で受け株代金は一〇、三六一、一六六、売却株数は九、〇〇〇株で売却代金は二、四三〇、〇二三である。

大林組は引き受け株数は二〇、〇〇〇株で引受代金五、四八八、一六六、売却株数は一六、〇〇〇株で売却代金は三、八九七、九五九である。

値幅取り株数は取得株数と売却株数の小さい方である。年間所有株に変化のなかった銘柄、すなわち、甲第三三号証巻末の昭和五〇年の大日本インキ、昭和五四年の大正海上、昭和五八年の北陸電力、昭和六〇年の中部電力、昭和六一年の東北電力の現物売買値幅取り総額は、総売却代金から総取得代金の差となる。その差は年平均売却代金と年平均取得代金の差と値幅取り株数の積として求める事が出来る。平均株価を用いる事から近似値となる。

4 東京建物、清水建設、大林組の現物売買値幅取り総額

昭和四八年七月-一二月の株数増加は東京建物は三、五〇〇株、清水建設は二五、〇〇〇株、大林組は四、〇〇〇株何れも増加している。所有株増加銘柄の値幅取り計算は、高い取得株と売却株の間で値幅取り総額を計算するか、又は安い取得株と売却株の間で値幅取り総額を計算するかによって計算結果が異なってくる。このために、増加株(残り株)を年平均取得株とする(甲第六号証・株式売買の値幅取りと損益計算法の4・6)。

5 昭和四八年七月-一二月の株式売買(付表-7)の平易な説明

甲第六号証は顧客勘定元帳から数学的に解いたものであるから を多く用いている。顧客勘定元帳から計算される式 の左辺の項を右辺に移動し、年平均売却代金と年平均取得(殆どは受株)代金、および、値幅取り株数(売却株数と取得株数の小さい方)を用いて計算すると、左辺は値幅取り等に、右辺は株式増減等になる。数学的であるので一般の人には、理解されがたい。そこで現金関係と増加株評価額を金額として示したのが付表-8である。

現物値幅取りは3銘柄でマイナス一、七六五、三〇二、信用損金はウケカブリソクを加えてマイナス一、三一一、六二二である。信用配当金はプラス三三二、五六二で、半年間での株式売買損はマイナス二、七〇三、八六九である。それにも拘らず東京建物三五、〇〇〇株清水建設二五、〇〇〇株、大林組四、〇〇〇株増加したのは繰越金(現金残)が八、一五三、四九九から一、五八八、五八四と六、五六四、九一五減少した事と、現金収支が六、〇三二、〇〇〇持込超過であることによる。付表-7の持込超過金の符号がマイナスになっているのは顧客勘定元帳の左辺から右辺に移行したためで、持込超過金は繰越金減少金額と同様、ある銘柄の受株か、市場からの時価買付けで株数が増加するから、その分だけ増加株を減じなければならないことによる。3銘柄とも所有していたから聡平均株価が計算できなく、したがって、聡平均法の計算はできない。顧客勘定元帳は金銭(おかね)の流れとして計算されていることから、現物売買値幅取りは市場価格の時価法で、現金収支も繰越金増減も考慮しない聡平均法は空想(仮想)的計算方法である。

三 総平均法は株式売買には適用不能

1 一般商品に適用される総平均法

ノートを一〇〇円で二〇〇冊仕入れた。一〇〇冊売れたため一〇〇冊を仕入れた。ノートは値上がりしていて一一〇円となっていた。一〇〇円の一〇〇冊分と一一〇円の一〇〇冊分の算術平均(総平均)価格は一〇五円となる。再び一〇〇冊売れたから一〇〇冊仕入れたら価格は一一五円となっていた。一〇五円の一〇〇冊分と一一五円の一〇〇冊分の算術(総)平均価格は一一〇円である。

平成五年は異常冷夏で、米作柄は不良で国内産米約二五〇万トン不足となった。秋口から自由米価格は値上がり始めた。不足分二五〇万トンが輸入され、ブレンド米として売り出された。今年(平成六年)三月頃の新潟産コシヒカリのヤミ価格は六〇キロ当たり六万円にまで値上がりした。その後徐々に値を下げ、七月になって急に四万円台から三万円台後半まで下落し、更に続落中である。ササニシキや秋田小町などの国内産自由米のヤミ価格も三月頃がピークで、七月になって急落、その後も値下がりを続けている。このような思惑で急騰、急落する時でも仕入原価を総平均法で計算するのは数学的に合理的である。

2 株価は変数的に変動するから、総平均法を株式に適用することは不可能

株価は一日中でも高値と安値の間を変動し、月間では株価が数倍にも値上がりする銘柄もあり、逆に数分の一に値下がりする仕手株や材料株もある。戦後証券取引所再開の昭和二四年五月の日経二二五平均株価は一〇〇で、昭和二五年六月の朝鮮戦争勃発まで多くの銘柄の株価は額面を出たり入ったりしていた。朝鮮戦争特需で株価は値上がりに転じ、神武・岩戸・いざなぎ景気の経済成長とその後のICを利用したハイテク民需製品の開発・輸出によって、日経平均株価は平成元年一二月二九日に三八、九一五円となった。その間各銘柄は額面有償増資、無償抱き合わせ有償増資、無償増資があって企業業績もよかったから株価は値上がりした。それ故、所有株にはゼロ(無償増資株)、取得価格四〇-五〇円(電力株など五〇〇円額面株は四〇〇-五〇〇円)(無償抱合わせ有償増資株)、取得価格五〇円(額面増資株)、および、時価発行増資株、ならびに、証券市場から額面以下で取得した株券や最適値近くで取得した株券など取得価格のいろいろの株券がある。

株式の特異性は取得価格に無関係に市場価格の時価で流通することである。そして、株価が変数・Xとして変動するから、一般商品に適用する総平均法は適用できない。X1・X2を一般商品価格のa、b、cと同じように取扱うことは数学的にできない。したところで株価が同じであるから、X1、X2と同じく市場価格で、流通するからである。

3 国税通則法第七二条と総平均法

国税通則法第七二条 国税の徴収権の消滅時効は五年と決められている。古く取得した株式は増資を考慮すると一〇倍以上に値上がりしている(甲第六号証・表2-1 の東京電力と甲第三三号証・表2-1のトヨタ自動車)。これらの株券を多数売却すると取得平均株価は額面以下であるから、売却代金のほとんどは利益となって、それに課税されると税金の持ち出しとなる。所得税法施行令一一八条・総平均法は、国税通則法第七二条に抵触する。

4 総平均法の本質的な欠点は顧客勘定元帳無視

持込金超過は何れかの銘柄の信用建株を受株することができ、証券市場からも直接買付けることができる。持出し金超過は何れかの銘柄を売却することになる。繰越金減少は持込み金超過と同じようになり繰越金増加は持出し金超過と同じようにしなければならない。そもそも、現物株を所有していなければ売却することは不可能であるから、現物売買値幅取りはできない。

顧客勘定元帳は前年度の繰越金から、貸方の欄の売却代金(ワタシ株代金を含む)、信用益金、信用配当金、現金入金を加算し、借方の欄の受株代金と買付け代金の取得代金、信用損金、現金出金(名義書換料を含む)を減じて次年度へとつながっている。本上告理由書の 二-2 に、現物売買値幅取りは売却株数とその代金、および、取得株数とその代金によって計算できる(時価法)。これに対し、総平均法は現金収支と繰越金増減を全く考慮しない空想(仮想)的計算方法である。

四 昭和四八年七月-一二月の株式売買

昭和四八年七月-一二月の株式売買は本訴訟とは無関係ではあるが、売買内容が簡単で実株売買値幅取りが売却代金と取得代金の差(時価法)であることの証明ができること、および、株式売買内容に付いて多くの示唆を与えるから述べる。

1 昭和四八年七月-一二月の株式売買

(1) 信用損益金、信用配当金は顧客勘定元帳から集計

信用損益金、信用配当金は上告人、被上告人とも顧客勘定元帳から集計する。したがって、上告人と被上告人の間に争いはない。

(2) 現金収支、繰越金(現金残)増減

現金入金は顧客勘定元帳の貸方の欄に記入されており、現金出金は借り方の欄に記入されている。現金入金は信用買建株を受株することもでき、証券市場から直接買付ける事もできる。現金出金はある銘柄のある株数を売却することになる。

前年度末の繰越金(預り金と信用保証金の合計・すなわち、現金残から貸し方の欄の金額が加えられ、借り方の欄の金額が減じられて次年度への繰越金となっていく。繰越金減少は持込み金過剰と同様に信用買建株を受株することができ、また、証券市場からある銘柄を買付けることもできる。

(3) 現物売買値幅取り損益計算は取得代金と売却代金の差(時価法)

国債、地方債、社債の資産評価は額面価格で、株式の資産評価は額面価格でなく時価である。これは遺産相続の被相続人の死亡年月日の終値で評価されることに見られる。株式以外の有価証券の損益計算は取得代金と売却代金の差であり、株式においても同じである。最も単純な値幅取りは1銘柄の現物売買値幅取りで、買ったと売ったの繰返しである。損益計算は買付け代金と売却代金の差となる。これに現金収支が加わるだけで、総平均法の入り込む余地は全くない。

値幅取りが多数銘柄になっても各銘柄の単なる集計である。実際の株式売買には、現物売買値幅取りに信用取引の値幅取りが加わるだけで、それに信用買建株に対する配当金(信用)が加わる。

(4) 株式売買損益と所有株数増減

昭和四八年七月からの株式売買損益は、現物売買値幅取りはマイナス一、七六五、三〇二で、マイナス四〇、四九三を含め信用損金マイナス一、三一一、六二二で、これに信用配当金三三二、五六二を加えてもマイナス二、七〇三、八六九である(付表-7)。現金持込超過金六、〇三二、〇〇〇と繰越金減少六、五六五、九一五があった(付表-8)ので、株式は東京建物三、五〇〇株と清水建設二五、〇〇〇株と大林組四、〇〇〇株が増加した。現金収支と繰越金増減が所有株増減に関係している明瞭な証拠で、現金収支と繰越金が ゼロ であれば、所有株の売却で二、七〇三、八六九を埋めることとなる。その時には、所有株は大幅に減少する(付表-7の平均売却代金からは一〇、〇〇〇-一一、〇〇〇株。昭和六二年がその例)。

(5) 値幅取り等と株式増減等の差の発生原因

値幅取り等の現物売買値幅取り計算は平均株価を用いている。そのため四捨五入のところに誤差は出る。売却代金と取得代金の差は銘柄によって相殺されるから、値幅取り株数の積も値幅取り等の数値に比較すると著しく小さい。したがって、値幅取り等と株式増減等の差の発生原因は後者に平均株価を用いているところに起因する。

(6) 架空差損と仮想差損

平成元年初頭からの株価暴落で株価は高値の1/3以下に値下がりしている。現物売買値幅取りでも現物売りの信用買建株の値幅取りでも総平均株価は市場株価より高くなっている。すなわち、昭和四八年二月・三月以後の東京建物、清水建設、大林組の総平均株価と同じ関係にあり、利益の時は仮想差損を含み、差損では架空差損を含む(甲第六号証 図4-1-Ⅲ)。

すなわち、バブル経済崩壊時の株価急落では、総平均法は必ず昭和四八年、および、平成二年後のようなこととなる。

五 本件訴訟前の所有株と昭和六〇年-六三年の株式売買

1 本件訴訟前の所有株

(1) 昭和三七年後半に配当取りのため東洋観光と横山工業を処分し、東京電力を始め旧三菱重工系3社、日立などに株式投資をした。そして、無償抱き合わせ増資や額面増資で所有株は増加した。

(2) 住居を勤務地近くに取得するため、昭和四一年末に東京建物を信用買建てし現物売りの信用買建ての値幅取りを行い、ニクソンショック後の昭和四六年後半から四七年初めに値幅取り銘柄に清水建設と大林組を加えた。

(3) 昭和三七年後半からの株式投資以後は、生活を切りつめ、ボーナスや特許裁判(甲第一四号証)の交通費・謝礼などで株式を買い増ししていった。

(4) 株式を買い増したことは、顧客勘定元帳からの集計の甲第一六号証の昭和四八年から昭和五九年の現金持込超過が、昭和五八年の退職金一一、八七七、〇〇〇を含め、二七、七二三、二〇五(上告人平成三年一〇月二八日付準備書面・表-5)であったことからも分かる。

(5) 上告人の値幅取りが現物売りの信用買建であったことは、前記表-5の信用配当金が各年にあることから明瞭である。

(6) 昭和五九年末の所有株は上告人平成五年一〇月二二日付準備書面別表-2のとおりであった。

2 昭和六〇年の株式売買(付表-9)

(1) 信用損益金、信用配当金、現金収支、繰越金(現金残)の増減

以上は、昭和四八年七月-一二月の株式売買と同様、顧客勘定元帳より集計する。

(2) 各銘柄の現物売買値幅取り

各銘柄の現物売買値幅取りの計算は、前述の昭和四八年七月-一二月の東京建物、清水建設、大林組と同様、乙第一九号証の売却株数と売却代金、受株株数と受株代金から計算した。四国電力を除く電力株と大正海上は株数が増加しているから増加株を年平均取得代金とし、住友海上、安田火災、東京建物は株数が減少しているから減少株を年平均売却代金とし、年平均売却代金と年平均取得代金の差と値幅取り株数の積として計算した。

各銘柄現物売買値幅取り総額はプラス三六、〇〇三、八一四(付表-9)となる。

(3) 値幅取り等の計算

現物売買値幅取り総額プラス三六、〇〇三、八一四に、信用利益金二二八、七一二と信用配当金三、五七四、七一二を加える。値幅取り等の総額は三九、八〇七、二三八となる。

(4) 株式増減等の計算

株式増減評価の計算は中部電力を除く電力株と大正海上、東急不動産は株数が増加しているから年平均取得代金と増加株数の積をプラスに住友海上、安田火災、東京建物は株数が減少しているから年平均売却代金と減少株数の積をマイナスとして各銘柄の所有株増減評価する。

石川島播磨の売却代金(被上告人 平成三年四月一五日付準備書面 別表三の収入)一、一一一、六二四はマイナスとしたのは所有株減少銘柄の減少株売却代金と同じように、ある銘柄の増加株を受株することになるからである。上記を総計すると昭和六〇年の株式増減評価はプラス三八、三一三、五九四となる。これに持出超過金一、五四五、〇一〇と繰越金増加一六三、二六〇をプラスとして加える。プラスとしたのはこの金額だけ何れかの銘柄が売却されているからである。

昭和六〇年の株式増減等はプラス四〇、〇二一、八六四となる。

(5) 現金持出金

甲第六号証表-4-12の山和証券からの持出超過金は七六八、二四七である。被上告人乙第二五号証の一の新日本証券亀戸支店からの持出金は七七六、七六三である。両者を合計すると一、五四五、〇一〇となる。

現金持出超過金一、五四五、〇一〇は幅取り等の四〇、〇〇五、〇八九に比較すると微々たる額で、値幅取り等のほとんどは所有株増となっている。所有株増は未処分利益で課税対象とはならない。

(6) 被上告人平成三年四月一五日付準備書面 別表-三の総平均法計算

被上告人平成三年四月一五日付準備書面 別表-三 の総平均法計算基礎となった昭和五九年末の所有株数(甲第五号証)は上告人平成三年六月二四日準備書面六に示してあるように、東京建物、東京電力、関西電力、東北電力、九州電力は、株式配当金と甲第一一号証(預り有価証券明細簿)と顧客勘定元帳から計算した株数と異なっている。総平均法が合理的であるとしても被上告人は再計算する必要がある(株価変動線と総平均株価移動線のカイリ、すなわち、架空利益と仮想利益の訂正)。

3 昭和六一年の株式売買(付表-10)

(1) 信用損益金、信用配当金、現金収支、繰越金(現金残)の増減以上は昭和六〇年と同様、顧客勘定元帳より集計する。

(2) 各銘柄の現物売買値幅取り

山和証券での売買の他に、昭和六一年には新日本証券亀戸支店で東京建物一、〇〇〇株と北陸電力一〇〇株、大東証券で北陸電力一、〇〇〇株を売却している。これらを山和証券と合計し、年平均売却代金を計算し直した。乙第一九号証には新日本証券分は入っている。

北陸電力は新日本証券と大東証券の売却株を山和証券と合計し、年平均売却代金を計算し直すと二、七〇五、一六一となって、北陸電力の値幅取り総額は八、八一二、二六八となる。それ故、各銘柄の現物売買値幅取り総額の和はプラス九九、一八九、七〇四となる。値幅取り総額は甲第六号証表-4-13と余り変わらない。

(3) 値幅取り等の計算

現物値幅取りの総計プラス九九、一八九、七〇四と信用損金マイナス三、二一八、三五八と信用配当金の総計は一〇〇、一三八、五四六となる。

(4) 株式増減等の計算

所有株増加銘柄の増加株の評価と所有株減少銘柄の減少株の評価は昭和六〇年と同様に計算する。北陸電力は大東証券で一、〇〇〇株売却されているから、所有株増は二、六〇〇株で増加株評価は四、九六四、〇八三となる。

他銘柄売却超過金は被上告人平成三年四月一五日付準備書面別表-三の石川島播磨と日本鋼管の収入であるから一、六四九、七六〇である。したがって、甲第六号証 表-4-13の一、二〇九、五四六は一、六四九、七六〇となる。その結果、株式増減評価はプラス八九、九二四、八六九となる。

これに、次の持出超過金プラス七、一七三、九四七と繰越金増加三、〇四〇、九七二を加えると、株式増減等は一〇〇、一三九、七八八となる。

(5) 現金持出超過金

山和証券からの持出超過金は甲第六号証表-4-13より二、〇六八、三五〇で、新日本証券からの持出金は乙第二五号証の一より東京建物一、〇〇〇株と北陸電力一〇〇株の売却代金の一、八六九、九四七、大東証証券の北陸電力一、〇〇〇株の売却代金三、二三五、六五〇である。持出金の合計は七、一七三、九四七となる。

値幅取り等の総計は一〇〇、一三八、五四六であるから、このほとんどは所有株増となっている。所有株増は未処分利益で、課税対象とはならない。そして、持出超過金も全額は利益ではない。

持出超過金は、甲第二三号証(乙第一四号証)の東砂三丁目ハイツの繰上償還金と甲第二四号証の西戸山タワーホームズの契約金(甲第三七号証)に使われた。

4 昭和六二年の株式売買(付表-11)

(1) 信用損益金、信用配当金、現金収支、繰越金(現金残)増減以上は、昭和六〇、六一年と同様、顧客勘定元帳より集計する。

(2) 各銘柄の現物売買値幅取り

昭和六二年は山和証券の他に、新日本証券で東京建物一、〇〇〇株と安田信託の買取請求の二、七六五株が売却されていおり、これらは乙第一九号証に含まれている。その他に、大東証券で東京建物一、〇〇〇株とアルプス電気CBの二、〇〇〇、〇〇〇がある(甲第四六号証)。アルプス電気CBは売却代金と取得代金の差であるから値幅は六三、五七五で、これは値幅取りの項に入れる。

東京建物の乙第一九号証の売却株数と売却代金に、大東証券の東京建物一、〇〇〇株の売却代金一、三三六、二四〇を加えて年平均売却代金を計算し直すと、一、四一七、〇六八となる。したがって、東京建物の値幅取りの総額をプラス六二五、九五六となる。それ故、各銘柄の値幅取り総額はマイナス一〇、六五六、二九一となる。

(3) 値幅取り等の計算

各銘柄の値幅取りの総額マイナス一〇、六五六、二九一と、信用損金マイナス五〇、四五三、七八九と、信用配当金三、八〇四、〇〇〇の総和はマイナス五七、三〇六、〇八〇となる。

(4) 株式増減評価

東京建物の乙第一九号証の昭和六二年の買付一二、〇〇〇株で、売却は二五、七六五株である。売却株の中には安田信託の買取請求の二、七六五株と新日本証券の一、〇〇〇株が入っている。大東証券で一、〇〇〇株売却しているから、売却株数の総計は二六、七六五株となる。したがって、売却超過株は一四、七六五株となり、減少株評価はマイナス二〇、九二三、二一五となる。各銘柄の株数増減評価はマイナス七二、四六八、八一二となる。

(5) 持出超過金

山和証券からの持出超過金一〇、一二四、一一〇(甲第六号証・表-4-14)と新日本証券の東京建物一、〇〇〇株と大東証券の東京建物一、〇〇〇株の売却代金一、三三六、二四〇と安田信託の買取請求が二、七六五株の売却代金三、六七二、一二八(乙第一九号証・八四ページ)で、合計は一六、四六八、七一八である。

(6) 株式増減等

株式増減評価マイナス七二、四六八、八一二、持出金超過プラス一六、四六八、七一八、繰越金減少(増加は校正ミス)マイナス三、四〇二、二三四の合計はマイナス五九、四〇二、三二八である。

(7) 持出超過金とその使途

現物売買値幅取りと信用損益金と信用配当金の総計、すなわち、昭和六二年の株式売買はマイナス五七、三〇六、〇八〇である。したがって、持出超過金一六、四六八、七一八は利益金を持出したものではなく、必要に迫られて所有株を売却し、その売却代金を持出したものである。

現金持出し金は甲第二四号証の西戸山タワーホームズの前金(甲第三八号証)と東砂三丁目ハイツ繰上償還金(甲第四三・四四号証)、および、横浜市泉区中田町三一八九-一の住居取壊し後地の駐車場転換費用(上告人平成五年一〇月二二日付準備書面四と別表9-2)と、妻トシの西戸山タワーホームズ(甲第二四号証)区分所有の一部に当てた。

(8) 総平均法の計算結果

被上告人の総平均法での計算結果は、昭和五九年末の所有株数をどうして算出したか不明(株式配当金とか有価証券預かり明細簿と異なる)であるが、被上告人平成三年四月一五日付準備書面別表-三に示されている。総平均法での現物売買所得は一一五、四三〇、四二〇である。これは年央の株式暴落後も総平均株価移動線が株価変動線の下にあった銘柄が多く、両者のカイリが大きく架空利益と仮想利益のためである。信用差損がマイナス五〇、四五三、七八九と大きいにも拘らず、現物売買値幅取りがプラス一一五、四三〇、四二〇、となることはあり得ない。両者が何れも株価変動を利用しての値幅取りであるからである(本上告理由書 四 の昭和四八年七月-一二月の株式売買)。

現物売買値幅取りは買いと売りとの差であるという常識的計算方法(時価法)である。現金収支も繰越金増減も考えない顧客勘定無視の総平均法は、空想的・仮想的計算方法である。

5 昭和六三年の株式売買(付表-12)

(1) 年平均売却代金

昭和六三年には山和証券の他に、新日本証券で東京建物八、〇〇〇株、大東証券で東京建物三、〇〇〇株と大正海上一、〇〇〇株が売却されている。年平均売却代金の計算には山和証券の売却株と合算して計算する。すなわち、乙第一九号証に甲第四六号証の大東証券の売却株を加えて計算した。

(2) 持込超過金

新日本証券での東京建物八、〇〇〇株の売却代金九、三八二、九四〇と大東証券での東京建物三、〇〇〇株の売却代金三、一四六、四〇一と大正海上一、〇〇〇株の売却代金一、一五一、八三六は持出されている。したがって、山和証券の持込超過金四六、〇五八、七一二と相殺すると、持込超過金は三二、三七七、五三五となる。

(3) 現物売買値幅取り(時価法)

山和証券と新日本証券の売却株数と売却代金、および、取得株数と取得代金は乙第一九号証に銘柄別に記載されているから、年平均売却代金を計算するには、これと大東証券の売却株数と売却代金を合算して計算した。

現物売買値幅取りは昭和六〇年-六二年と同様に、年平均売却代金と年平均取得代金の差と値幅取り株数の積から求めた。計算結果は 付表-12に示した。北陸電力CBも値幅は売却代金と取得代金の差として株式増減評価項からここに移した。各銘柄の値幅取り総額は株価が安値低迷していたから、プラスとマイナスがバラバラとなっていて、絶対値も小さい。その総計は一、二三五、九六八である。

(4) 値幅取り等

各銘柄の値幅総額一、二三五、九六八に、信用損金マイナス二、三九〇、〇八五と信用配当金一、六一五、二〇〇を加えると、値幅取り等は四六一、〇八三となる。したがって、昭和六三年は殆ど値幅取りが出来なかった。

(5) 株式増減評価

昭和六二年六月末頃、江東東税務署から株式取引について尋ねられ、一〇月初めに現物売買値幅取りの損益計算が総平均法であると告げられた。上告人は最初から顧客勘定元帳がないと数学的に総平均株価が計算不可能で、総平均法は計算出来ないことを昭和四七・四八年の小バブルの時から知っていた。これが 甲第二〇号証 である。しかし、事が面倒であるから、日本証券金融から多額の融資を受けて年末に信用買建株を全部受株した。所有株増減評価はプラス三四、五四二、四四〇である。

(6) 株式増減等

所有株増減評価はプラス三四、五四二、四四〇である。新日本証券と大東証券の持出金を山和証券の持込超過金と相殺すると、持込超過金はマイナス三二、三七七、五三五となる。したがって、株式増減等は二、〇〇二、三七一となる。

六 被上告人の加筆・改ざんとデータ削除

1 被上告人の昭和四八年九月三〇日受渡しの東京電力、関西電力、東北電力、東京建物は加筆・改ざん

東京電力四、〇三〇株、東北電力一二、一一〇株、東京建物五〇、一六二株(以上乙第一九号証)、および、関西電力二、七八六株(乙第三六号証)の買付けは、甲第二六号証の顧客勘定元帳にも無く、その日が日曜日で受渡しが無かった事から、総平均株価計算を可能にするための加筆・改ざんである(甲第四七号証)。仮に買付けられたとすると何れの銘柄もその間増資があったから、上告人の昭和五九年末の所有株は、配当金や預かり有価証券明細簿の株数より買付株数以上増えている筈である。そもそも、顧客勘定元帳への加筆は公文書偽造である。

2 データ削除

本上告理由書付表-3-A の清水建設九、〇〇〇株売却超過(甲第二六号証)がなければ、付表-1のように、四、〇〇〇株の売却超とはならない。そのため、データ削除の必要ない。したがって、乙第一九号証では削除されていない。

大林組は甲第二六号証は売却超過二、〇〇〇株で、昭和五四年の端株六七八株を除いても売却超過二一、〇〇〇株である。この売却超過は東京電力、関西電力、東北電力、東京建物のように売付・加筆というわけにはいかない。売付・加筆は何等効果がないからである。裁判官の目を誤魔化すための乙第一九号証からの削除となった。

三菱重工は昭和三七年株式初投資からの所有株であった。昭和四六年八月のニクソンショックで東京建物信用買建株の受株で全部売却したが、付表-1 のように四、〇〇〇株の売却超である。これは、ニクソンショック後、信用買建株をし、受株したものである。これも大林組と同じように売却・加筆という訳にはいかないから、乙第一九号証からは削除となった。

乙第一九号証の欠陥は、東京建物と電力会社の昭和六一年無償増資以外の増資による所有株増が記載されていないことである。増資による所有株増がわからないと総平均株価の計算はできない。

3 売却代金は信用買建株の受株と買付代金、すなわち、顧客勘定元帳はお金の流れ(総平均法の否定)

付表-1の昭和四九年には、清水建設は二九、〇〇〇株の売却超過、と大林組は二五、〇〇〇株の売却だけである。

甲第三三号証巻末の時価法計算結果は、お金の流れとして計算したから、ワリフドーは株式増減等に組み入れられていた。これを値幅取りの項に移すと、値幅取り総額はプラス九五、五八七がプラス二二、八八七に減る。これに信用損金マイナス二六〇、七二八と信用配当金を加えると、値幅取り等の総計はマイナス四四、六八〇となる。

ワリフドーが値幅取り項に移行したから、株式増減評価のプラス二、九四一、一五四はプラス二、〇一三、八五四に減る。大林組と清水建設の売却代金がなければ、値幅取り等がマイナス四四、六八〇で持込超過金一、八四六、七〇〇

と繰越金減少一、三〇七、二八〇で受株に使える金額は三、一〇九、三〇〇である。東京建物四六、〇〇〇株と大日本インキ八、〇〇〇株の受株代金の合計は一三、七五六、八一二である。大林組と清水建設の売却代金合計の一一、七四二、九五八がなければ到底東京建物と大日本インキを受株または買付けもできない。この時ワリフドーの売却代金九二八、三〇〇は大林組と清水建設の売却代金と共に受株または買付けに使われた。

なお、大林組と清水建設は昭和四八年七月以前の顧客勘定元帳から総平均株価の計算はできなく、それ故、総平均法の損益計算もできない。

七 年度毎の総平均法とその課税額と時価法の計算結果と持出超過金、および、時価法と憲法二九条・憲法二五条

1 総平均法と時価法の比較(付表-13)

付表-13は昭和六〇-六三年の被上告人の総平均法と上告人の時価法の計算結果をまとめたものである。信用損益金と信用配当金は顧客勘定元帳より集するから一致する筈である。昭和六一年と六二年の両者に差はないが、昭和六〇年と六三年は若干差がある。上告人の集計ミスと考え、値幅取り等は被上告人の数値を用いて訂正した。

(1) 現物売買値幅取りは時価法

乙第一九号証は年度毎に各銘柄の売却株数と売却代金、および、取得株数と取得代金が集計されている。昭和六一年の東北電力は証券市場での買付株数は四五、一〇〇株で買付代金総額は八二、四二五、五〇四で、売却株数は四五、一〇〇株売却代金総額は一〇九、九三三、三七二である。したがって、値幅取り総額は売却代金と買付代金の差である。この計算は、年平均代金と年平均取得代金の差と、値幅取り株数の積とする上告人・時価法そのままである。

本上告理由書 -三-1 で述べた一〇〇円のノート一〇〇冊と一一〇円のノート一〇〇冊の算術(総)平均価格は一〇五円で、これを一冊一五〇円で一〇〇冊売ると利益は売却価格(一五〇)と総(算術)平均価格(一〇五)の差と売却冊数の積となる。この式と株式現物売買値幅取りの式と比較すると、売却価格一五〇円が年平均売却代金に、算(総)平均価格一〇五円が年平均取得代金に、売却冊数が値幅取り株数に相当する。

株式売却代金の総額Aと、取得代金の総額Bは次式で示され総平均株価の入り込む余地は全くない。

A=a1+a2+a3+…+aj+…+an=nx(年平均売却代金)…式(1)

B=b1+b2+b3+…+bj+…+bn=nx(年平均取得代金)…式(2)

総平均株価と各構成項の関係は次式で示される。

n =x1+x2+x3+…+xj+…+xn…式(3)

=x1=x2=x3=…=xj=…=xn…式(4)

株式は時時刻々変動する変数で、変数を算術平均した も変数で株式が取得価格に無関係で市場価格で流通することから、元のx1、x2、x3、…、xnと全く変わらないからである。算術(総)平均価格はaやbが常数の時のみ求められる。

株式売買において所有株が増加する銘柄と減少する銘柄がある。所有株が増加する銘柄の値幅取り計算を取得株の安いものでするか、高いものでするかによって計算結果が異なってくるので、増加株を年平均取得代金とする。所有株減少銘柄の値幅取り計算を安い売却株でするか高い売却株でするかによって計算結果が異なってくるので、減少株を年平均売却代金としたのが 時価法 である。

(イ) 株価値上り時の現物売買値幅取りマイナス銘柄の所有株増銘柄

株価値上り時の昭和六〇、六一年に現物売買値幅取りがマイナスとなったのは昭和六〇年の中国電力と昭和六一年の安田火災だけである。株価値上り時であるから銘柄間の値幅取りで、株価が安い年前半で多くの売却が行われ、逆に株価が高い年後半で取得が多く行われたためである。

値幅取り等は多額で昭和六〇年は住友海上、安田火災、東京建物だけは所有株減少で、他銘柄は何れも所有株が増加している。昭和六〇年の持出超過金は一、五四五、〇一〇だけである。

昭和六一年の現物売買値幅取りがマイナスとなったのは安田火災だけである。株価が値上りしたため値幅取り等は昭和六〇年より更に大きくなった。所有株数減少銘柄は中国電力、九州電力、大正海上だけで他銘柄は何れも所有株は増加している。持出超過金は七、一七三、九四二と昭和六〇年より増加したが、それでも値幅取り等の一〇〇、一三九、七八八のほとんどは所有株増となっている。

(ロ) 株価暴落時の昭和六二年の現物売買値幅取りマイナス銘柄と所有株減少銘柄

昭和六二年は年央に各銘柄の株価は暴落したので、現物売買値幅取りがプラスなのは電力株では関西電力、北陸電力だけであり、値幅取り総額はマイナス一〇、六五六、二九一である。信用損金と信用配当金を含めた値幅取り等はマイナス五七、八〇九、〇八〇であった。これに持出超過金一六、四六八、七一八と繰越金減少三、四〇二、二三四を含め、所有株が増加した銘柄は関西電力、中国電力、住友海上、住友不動産だけである。

(ハ) 昭和六三年の現物売買値幅取りと所有株増減

昭和六三年前半は株価は安値低迷していたので、値幅取り等は一、四六一、〇八三であった。これは持込超過金とともに所有株増となった。

2 総平均法課税額と時価法と持出超過金(付表-14)

付表-14に、年度毎の被上告人総平均法の課税対象利益、国税本税、過少申告加算税、国税総計と、地方税、上告人の持出超過金、株式増減等と持出超過金の使途をまとめている。

(1) 昭和六〇年

昭和六〇年の課税対象利益は六八、五二五、八五二で、国税合計は四〇、九二三、七〇〇と地方税一一、一七六、五〇〇を加えると税金総額は五二、一〇〇、二〇三となる。持出金超過は一、五四五、〇一〇で、値幅取り等は殆ど所有株増となっている。所有株増は未処分利益で課税対象とはならず、持出金も全額は利益ではない。

(2) 昭和六一年

昭和六一年の課税対象利益は一五三、二〇五、九二四で、国税合計は一〇五、八二八、六〇〇で、地方税二四、五八六、六〇〇を加えると税金総額は一三〇、四一五、二〇〇となる。持出金超過は七、一七三、九四二で、値幅取り等は殆ど所有株増となっている。所有株増は未処分利益で課税対象とはならず、持出金も全額利益ではない。

持出金は東砂三丁目ハイツ繰上償還金と西戸山タワーホームズ契約金に用いられた。

(3) 昭和六二年

昭和六二年の課税対象利益は六九、七三七、一〇四で、国税合計は四一、九二四、五〇〇で、地方税一一、〇七四、一〇〇を加えると税金総額は五二、九九八、六〇〇となる。時価法での値幅取り等はマイナス五七、八〇六、〇八〇である。これは被上告人の総平均法が、現金収支と繰越金増減を考慮しない顧客勘定元帳無視の空想的・仮想的計算方法であることの証拠である。

持出超過金一六、四六八、七一八は東砂三丁目ハイツ繰上償還金などに使われており、必要に迫られて所有株を売却し持出したものである。

(4) 昭和六三年

昭和六三年の課税対象利益は二八、八八九、三六二で国税合計は一四、七〇九、三〇〇で、地方税四、七〇三、九〇〇を加えると税金総額は一九、四一三、二〇〇である。持込金超過三二、三七七、五四五で所有株増となっている。持込超過であるのに多額の課税とは理解に苦しむ。

3 総平均法と憲法第二九条、憲法第二五条

憲法第二九条 〔財産権〕 財産権は、これを犯してはならない。とある。付表-14の課税額を支払うには、昭和三七年から特許紛争の礼金・交通費や生活を切り詰めてボーナスで買増した株式と増資増加株、退職金の約1/3での買付株、退職引当金と退職時の繰上償還で約六割を支払った東砂三丁目ハイツの上告人所有区分、三菱銀行からの借入金三、〇〇〇万円(2年後株式売却返済)と住宅都市整備公団の一、〇〇〇万と昭和六一、六二年の持出超過金で取得した西戸山タワーホームズの上告人所有区分、および横浜市泉区に住宅金融公庫の借入金で一戸建住宅建設のため上告人(長男)所有の田舎の水田六畝を売却して買求めた七〇坪(売買契約書の坪数)土地を売却しても不足する(上告人平成五年一〇月二二日付準備書面・別表-11)すなわち、総平均法は現金収支と繰越金増減を考えない顧客勘定元帳の空想。仮想的な欺もう・詐欺的計算方法であるので、憲法第二九条に違反する。

税金未納には15%の遅滞金がつく。平成五年末の国税総計は五二九、九二二、一六九で地方税一三四、六六六、三〇五で税金総額は六六四、五八八、四七四である(同・別表-8)。

憲法第二五条 〔生存権、国の生存権保障義務〕 すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。とある。

最低限度の生活は衣・食・住の3つが揃って初めて成り立つ。衣と食は国家公務員共済年金で賄えるが、住居はそうはいかない。

すなわち、総平均法は憲法第二五条の最低生活を営むのに必要な住居を上告人から取り上げるからである。

八 東京地方裁判所(第一審)と東京高等裁判所(第二審)判決

1 東京地方裁判所(第一審)判決

東京新宿税務署への異議申立てと東京国税不服審判所に審査請求中にまとめた甲第五号証を「株式売買の値幅取りと損益計算法」として出版し、国税不服審判所の判決が一年五ヶ月過ぎても出なかったので、東京地方裁判所の「所得税更正処分取消訴訟」(平成二年行ウ第二一〇号)となった。

総平均法は本上告理由書で述べてきたように、最初からの顧客勘定元帳がないから計算不可能で、現金収支と繰越金増減を考えない顧客勘定元帳無視の空想・仮想的な欺もう・詐欺的計算方法であり、憲法第二九条と憲法第二五条違反である。

時価法は顧客勘定元帳に忠実で、現物売買値幅取りが売却株数と売却代金および取得株数と取得代金から計算される 年平均売却代金と年平均取得代金 の差と 値幅取り株数 の 積 として求められる。実際に乙第一九号証の各銘柄の各年度の売却株数と売却代金および取得株数と取得代金から求められる。これが 甲第六号証の時価法 である。

現物売買は売却と取得(本件では殆どが受株)の繰り返しで、総平均法の入り込む余地は全くない。それにも拘らず東京地方裁判所は判決文 七 に

もちろん、必要経費を算出する手段として総平均法以外のものも考えられないでもないが、何れを採用するかは立法政策の問題であり、違憲の問題が生じない限り、裁判所の立ち入るところではない。

とし、上告人請求を棄却した。

東京地方裁判所の判決は、選挙の一票の格差違憲裁判の第一審が高等裁判所で、違憲について上級審に委ねたとすれば理解できる。

註 必要経費を算出する手段は…の必要経費は損益計算と書替える必要があろう。必要経費では意味不明。すなわち、総平均法、時価法、現行の源泉分離課税方式の見なし課税など。

2 東京高等裁判所(第二審)判決

上告人は最初からの顧客勘定元帳がないので総平均株価の計算は不可能で、したがって総平均法計算はできない。現物売買値幅取りは顧客勘定元帳に基ずく時価法であると述べた。平成五年一〇月二二日付準備書面別表-1で、総平均法と時価法の相違、現金収支、借入金状況を述べ、別表-2で、昭和六〇、六一年の時価法での値幅取り等は殆ど所有株増となり、昭和六二年は各銘柄の株価が年央で暴落したので現物売りの信用買建ての値幅取りは多数の信用買建株が残ったので値幅取り等は大幅赤字で穴埋めのため所有株は減少し、昭和六三年は年前半の株価が低迷していたので値幅取り等は僅かのプラスで、年末に日証金からの借入金で信用買建株を受株したので所有株は増加した(本上告理由書付表-13と内容は同じ)。

本上告理由書付表-1から、昭和四八年六月末には清水建設、大林組、三菱重工を所有していた。そして、東京電力、関西電力、東京建物は株式配当金か有価証券預かり明細簿(甲第一一号証)から逆算すると3銘柄とも昭和四八年六月末には所有株があった(上告人平成六年四月二六日付準備書面付表)。

被上告人は総平均法の計算を可能にするため東京電力、東京建物を乙第一九号証で四、〇三四株と五〇、一六二株、関西電力は乙第三六号証で二、七八六株を昭和四八年九月三〇日受渡買付けたと加筆・改ざんした。この買付けが総平均法の計算を可能にするための加筆・改ざんであることは甲第二六号証にはなく、九月三〇日が日曜日であることから明らかである。そして、甲第二六号証で売却先行付表-1となっている清水建設と大林組の大林組を乙第一九号証から削除した。清水建設は甲第二六号証で九、〇〇〇株売却先行となっているが、昭和四八年一〇月からの乙第一一号証では売却超とならない。大林組の売却超過二一、六七八株と多くてはどうしようもない(付表-1)。

被上告人が乙第一九号証と乙第三六号証で東京建物、東京電力、関西電力の加筆・改ざんで総平均法計算を可能にする小細工をしたが、大林組と三菱重工は裁判官の目をごまかすために乙第一九号証からの削除となった。

被上告人は平成六年三月二四日付準備書面第二で、東京建物と東京電力(乙第一九号証)、関西電力(乙第三六号証)の買付け加筆・改ざんを、控訴人昭和四八年九月三〇日の所有株と推計としているが、これは言い逃れに過ぎない。株式配当金や有価証券預り明細簿から逆算すれば所有株があり、買付けが行なわれていれば各銘柄共増資があったから、買付株以上の株数が昭和五九年末の所有株にプラスされていなければならないからである。

金融機関は現物株売買(値幅取り)損益は売却価格と取得価格の差であり、区役所税務窓口係りと信託銀行窓口嬢は総平均法の架空利益(甲第六号証・図-4-1-Ⅰ)を理解され、証券会社は顧客勘定元帳の通りであるという。上告人の時価法は顧客元帳から誘導される式11から計算される。すなわち、現物売買値幅取りは売却代金と取得代金とする全く常識的な計算方法である。

信用損益と信用配当金は被上告人、上告人共に顧客勘定元帳から集計する。現物売買値幅取りの損益計算は被上告人は総平均法で、上告人は顧客勘定元帳よりの売却代金と取得代金の差とする時価法で、金融機関関係者のいうものと同じである。時価法では値幅取り総額が多額である年(昭和六〇、六一年)は信用損益金と信用配当金の値幅取り等の殆んどが所有株増となっていても、総平均法での課税対象利益は莫大で、したがって、課税額も莫大である。時価法で現物値幅取りがマイナスで、信用差損が莫大で、穴埋めのための所有株が多数株減少した年(昭和六二年)も総平均法での課税対象利益は多大で、したがって、課税額も多額である。銘柄変換で値幅取り等が小さく、現金収支が持込金超過な年(昭和六三年)でも、総平均法での課税対象利益は多額である。したがって、総平均法での莫大な課税額を納めるには、昭和五九年以前に取得していた横浜市泉区の土地、所有株式、および、所有区分の半分以上納めていた東砂三丁目ハイツ、ならびに、住宅金融公庫と三菱銀行からの借入金で取得した西戸山タワーホームズ(三菱銀行の借入金は所有株式売却で返済)を売却しても不足し、住宅金融公庫未返済が残る。

すなわち、総平均法は本上告理由書に前述したように、憲法第二九条と憲法第二五条に違反する。

裁判官は既成法律によって判決することは理解できるが、総平均法は戦後の混乱期にできたもので、当時は株価の変動も小さく、現物売買損益を行っても、総平均株価の変動は小さかったからそれ程誤差は大きくなかった。昭和二四年五月の日経二二五平均株価は一〇〇であったが、平成元年末には三万八九七五円八七銭となった。金融・経済大国となった現在はテレビとラジオのニュース毎に円・ドル相場と平均株価を、朝のニュースではニューヨーク市場の円・ドル相場とニューヨークダウ平均株価を報道している。現物売買値幅損益は金融機関関係者の言う常識的な売却代金と取得代金の差、すなわち、時価法である。総平均法と時価法の間には、区役所税務窓口係と信託銀行窓口嬢も理解する架空利益と仮想利益がある。三権分立の裁判においては、被上告人の主張を聞くばかりでなく、上告人の主張も考慮していただきたかった。

九 結論

上告人は昭和三五年九月、三人の子供を残して先妻にさきだたれた。昭和三六年六月に現在の妻と結婚し、翌年六月三男が生まれた。国立大学の助教授では家族五人を養えないので、妻の所有していた無配株の東洋観光と利回りの小さい横山工業を売却した五〇万円と、銀行預金の約一五〇万円(この中には結核で一〇年間看病した先夫の家からの謝礼金が含まれる)で、配当利回りが高く増資も期待できる東京電力、旧三菱重工分割の三菱造船、日本重工、新重工、日石、東京ガス等に株式投資した。そして、教育費のことを考え、生活を切り詰めてボーナスなどで株式を買いましていった(顧客勘定元帳がある昭和四八年七月から昭和五九年末までの現金収支からわかる(平成三年一〇月二八日付準備書面表-5)。

上告人の職務の関係から、株式売買を証券会社に任せきりにすることができる現物売りの信用買建ての値幅取りであった。当時のプロセス自動化にヒントを得たものである。その結果が、顧客勘定元帳が現存する甲第三三号証巻末付表の昭和四九-六三年の時価法計算結果である。上告人の株式売買は自動化のための現物売りの信用買建ての値幅取りであるから、必ず売却先行の銘柄がある。すなわち、甲第二六号証の清水建設、大林組である。(付表-6)。そして売却超過の三菱重工と、配当金と預り有価証券明細簿から逆算した東京建物、東京電力、関西電力を昭和四八年六月末に所有していた(上告人平成六年四月二六日付準備書面)。そのため、清水建設、大林組、三菱重工、東京建物、東京電力、関西電力の総平均株価の計算は不可能で、総平均法損益計算はできない。

顧客勘定元帳は前年度の繰越金から借方の欄の受株代金と買付代金の取得代金、現金出金(名義書換料を含む)、信用損金を差引き、貸方の欄の売却(渡し株を含む)代金、現金入金、信用益金、信用配当金を加え、翌年への繰越金となっていく。そのため、現物売買値幅取りは売却株数と売却代金、取得株数と取得代金から計算される年平均売却代金と年平均取得代金の差と値幅取り株数の積として計算される。乙第一九号証に大東証券(甲第四六号証)の売却株を加えて計算したのが付表-9(昭和六〇年)、付表-10(昭和六一年)、付表-11(昭和六二年)、付表-12(昭和六三年)である。

昭和六〇-六三年の各年の総平均法と時価法の比較をしたのが、付表-13で、総平均法での課税対象利益と課税額と時価法での株式増減等と持出超過金を示したのが 付表-14である。

付表-13の時価法の値幅取り等と株式増減等の差は4年間でプラス一二二、八七三で値幅取り等の殆どは所有株増加(昭和六〇、六一、六三年)と所有株減少(昭和六二年)となっている。

昭和六〇、六一年の値幅取り等は殆ど所有株増となっていて持出金超過合計は八、七一八、九五二である。昭和六三年の値幅取り等は少なく、持込超過金と共に所有株増となっている。昭和六二年は株式増減等は大幅赤字で、持出超過金一六、四六八、七一八は利益金を持出したものではなく、必要に迫られて持出したものである。(付表の持出超過金の使途)。総平均法で現物売買利益と信用損益金と信用配当金を加えた課税対象利益は付表-14の如くで、4年間の合計は三二〇、三五八、二四二で、国税総計二〇三、三八六、一〇〇で、地方税を加えると税金総額は二五五、一七五、六〇三である。

持出超過金は株式売買が大幅赤字となった昭和六二年を加えても、4年間で二五、一八七、六七〇である。

税金総額二五五、一七五、六〇三を納税するためには、上告人の所有する横浜市泉区中田町の土地、東砂三丁目ハイツと西戸山タワーホームズの上告人所有区分、上告人所有株式を全部売却しても不足する。

以上のことは、現物売買損益金(値幅取り損益)が総平均法であるか時価法であるかによる。最初からの顧客勘定元帳がなくても総平均株価の計算ができるかどうか、顧客勘定元帳には現金収支と繰越金増減があるのにこれを無視している総平均法が現物売買値幅取りに適当であるかをご検討なされて、再度御庁標記所得税更正処分等取消請求事件を御配慮ください。

註 ノートのときの算術平均価格(一〇五円とか一一〇円)は、式 2 の年平均取得代金と同じ関係にある。計算には一〇〇円・一〇〇冊と一一〇円・一〇〇冊の買付代金が入っていて、買付代金は常数(定数)である。

年平均取得代金=(b1+b2+b3…+bj+…+bn)÷n…(2)

105円=算術平均価格=〔100円×100(冊)+110円×100(冊)〕÷200(冊)…(5)

110円=〃=〔105円×100(冊)+115円×100(冊)〕÷200(冊)…5’

株式の現物売買値幅取りは、年平均売却代金と年平均取得代金の差(時価法)となる。

以上

表-1 昭和48年7月~54年末の清水建設、大林組、三菱重工の受株と売却数(昭和48年6月末の所有株の検討)

〈省略〉

表-2 昭和40~48年の東京建物、清水建設、大林組、三菱重工の増資

〈省略〉

表-3 昭和48・7~12月の東京建物、清水建設、大林組の受株と売却株数(三菱重工は売買ナシ)

A)7月~9月(甲第26号証)

現金残(預り金+信用保証金) 6・30日:8,153,499円

**

9・28日:6,540,153円

〈省略〉

B)10月~12月(乙第11号証)

**

現金残(預り金+信用保証金) 9・28日:6,540,153円

12・26日:1,588,584円

〈省略〉

表-4 昭和48年6月末の所有株数

〈省略〉

表-5 昭和48年7月~12月の取引

A)東京建物、清水建設、大林組の昭和48年の株価

〈省略〉

B)東京建物、清水建設、大林組の信用損益金(甲第26号証と乙第11号証からの集計)(上告人と被上告人は同じ)

〈省略〉

C)東京建物、清水建設、大林組の信用配当金(上告人と被上告人は同じ)

〈省略〉

D)現金入出金(出金には名義書替料も含まれる)

入金 7,072,000 出金 -1,040,000 入金超過 6,032,000

E)現金残(繰越金)の増減

6月30日の現金残 8,153,499 昭和50年度への繰越金 1,588,584 現金減少 6,564,915

F)東京建物、清水建設、大林組の受株数と売却株数とその代金

〈省略〉

表-6 東京建物、清水建設、大林組の受株と売却株数との代金の集計(表-5-Fの計算)

〈省略〉

表-7 昭和48年7月~12月の半年間の時価法計算結果

〈省略〉

表-8 昭和48年7~12月の株式売買(表-7)の平易な説明

〈省略〉

付表-9 昭和60年の株式売買

〈省略〉

付表-10 昭和61年の株式売買

〈省略〉

付表-11 昭和62年の株式売買

〈省略〉

付表-12 昭和63年の株式売買

〈省略〉

付表-13 総平均法と時価法の比較(総平均法数値は被上告人平成3年4月15日付準備書面別表一)

〈省略〉

付表-14 総平均法での課税額と時価法での株式増減等と持出超過金

〈省略〉

備考:国税4年間総計 =203,386,100、地方税総計=51,541,100、両者総計=255,175,603

持出金4年間総計=25,187,670

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